中村キース・ヘリング美術館は小淵沢駅からタクシーで７分、小淵沢ICから車で５分の森の中に位置しています。
当館では、2025年6月7日 (土) から 2026年5月17 日(日)まで、当館の設計者である国際的な建築家北川原温さんの創作の原点について、星座というキーワードをもとに探る展覧会を開催しています。

北杜市の観光の玄関口であるJR小淵沢駅舎・駅前広場が中村キース・ヘリング美術館と同じ建築家、北川原温さんが設計されたことをご存じでしょうか？
2018年に竣工した小淵沢駅舎と駅前広場は建築家と東京藝術大学の学生、そして小淵沢の地域の方々がワークショップやディスカッションを重ね、長い時間をかけて完成しました。ぜひ、小淵沢駅についたら改札を出て右側の階段を上がった屋上や、２Fの交流スペース、そしてロータリーから少し離れて建物全体を見てみてください。

焦茶色のアルミパネルで覆われたボリュームが八ヶ岳を背景に浮かび上がるような小淵沢駅舎の２階の造形は八ヶ岳の山容の頂部と山麓を駆け抜ける馬の姿をモチーフにしています。今回、展覧会のサテライト会場として、小淵沢駅２階の交流スペースでは建物の正面の造形が馬や山並みから次第に駅舎へと変遷していく北川原温のドローイングを光に透ける布にして展示しています。台形の窓に切り取られた八ヶ岳や、刻一刻と光の透け方が変わる布の演出など、建築とともに、お楽しみください。

北杜市は建築家、北川原温の建築が６つも集中している珍しい場所です。交流スペース２階で展示しているパネルには、６つの建築の紹介と所在地マップもあります。
ここ、小淵沢駅を交流スペースをアートと建築を巡る旅の起点としてみてはいかがでしょうか？

北杜市では多くのアートやクラフトの作家がアトリエを構え活動をしています。そして市内には個性豊かな美術館やギャラリーが点在しています。北杜のアートが旅の思い出になってもらえるように、今回は中村キース・ヘリング美術館で開催中の展覧会「北川原温　時間と空間の星座」展について、展示の内容をこの企画をされた中村キース・ヘリング美術館学芸員の八木良美さんに紹介していただきます。

本展覧会「北川原温　時間と空間の星座」は、中村キース・ヘリング美術館を設計した建築家・北川原温（1951-）の美術館における初個展です。
北川原温は、渋谷の映画館ライズ（1986）で都市の虚構性を建築に表現し、その後も独創的な建築を生み出し続け注目を集めてきました。渋谷に足を運んだことがある方は、センター街近くにある特徴的な建築を見たことがあるかもしれません。

本展では、北川原氏の創作のソースを「星」、建築を「星座」に見立て、その方法論や生成の過程を探ります。中村キース・ヘリング美術館を構成する6つの要素「さかしまの円錐」「闇」「ジャイアントフレーム」「自然」「希望」「衝突する壁」を軸に、模型や資料を通じて建築のプロセスをたどっていくのですが、たとえば「自然」のセクションでは北川原温が幼少期故郷の長野で集めた蝶の標本が、また「希望」のセクションでは不条理文学の小説など、建築の生成される過程にある様々な世界観が次々に現れてきます。

展示だけでなく、中村キース・ヘリング美術館は特徴的な屋根や巨大な逆さの円錐、不定形で動き出しそうな壁など、驚くような造形が次々と現れます。まるで宇宙を探検するような感覚で、どんなものが見えてくるか、想像をめぐらしながら展示や建築を歩いてみてください。中村キース・ヘリング美術館を作り上げた建築家の姿を、みる方１人１人がご自身の気になった場所から想像していただけますと幸いです。